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対話で着火される想像力:美術鑑賞からロゴデザインへ
見ることから体験することへ – 対話型鑑賞の可能性
ロゴデザインのブログのはずが、美術の話から始まってしまう本記事ですが、「人が何かを考え、感じる」という地平に於いては共通領域が多いだろうと思い、そんな出だしにしました。
突然すみません、想像してみてください。

森の中、木々に囲まれた美術館の静かな展示室。壁に掛けられた作品の前に数人が集まり、声を交わしています。
「私にはこれが波のように見える」
「私は雲の動きだと思う」
「なんだか不思議と懐かしさを覚えるな」
これは「対話型鑑賞」と呼ばれる美術作品の鑑賞方法です。
上記の情景は、私自身が美術家として森の中にあるとある公立美術館でのグループ展に参加した際に、来場者の皆さんに対して自身で開催したワークショップのいち場面です。
対話型鑑賞の本質は実にシンプルです。作品を見た人が「見えたもの」「感じたこと」を、作品の前で互いに言葉にして共有し合う、というものです。
アーティストが横から解説することはなく、正解もありません。ただ、自分の内側に生まれた印象や感情を言語化し、他者と交換します。
実際、その展覧会で私の油彩画の前でも私自身がファシリテーターとなって対話型鑑賞を行いましたが、私は自作について交わされる様々な「印象」を聞きながらニコニコしてファシリテートし続けていました。
自分の内側に生まれた印象や感情を言語化し、他者と交換する。
この一見シンプルな行為が、実は「モノの見かた」の質を根本から変えていくのです。
受動から能動へ:自発的な「見る」が生む着火効果
通常の美術鑑賞では、多くの人が作品の前を素通りするか、せいぜい数秒立ち止まるだけです。
キャプションを読み、「なるほど」と頷いて次へ進む。この鑑賞スタイルは、どこか受動的です。
しかし対話型鑑賞では、自分の言葉で表現するという行為が、見る人の内側に変化をもたらします。「あれ?私はなぜこの部分に惹かれたのだろう」「なぜ悲しいと感じたのだろう」と自問自答が始まり、より注意深く作品と向き合うようになります。
他者の視点を聞くことで、「そういう見方もあるのか」と新たな角度から作品を見直す機会も生まれます。こうして「受動的な見る」から「能動的な体験」へと変化していくのです。
この変化こそが、対話型鑑賞の最大の魅力です。
ロゴデザインへの応用 – 見る人の想像力を引き出す
遠回りしてしまいましたが、この「着火→体験」のプロセスは、私がロゴ作成を行う際に大切にしている考え方と共鳴しています。
ロゴとは何でしょうか?単なる企業の記号でしょうか?違います。
優れたロゴは、見る人の内側に小さな「着火」を起こし、想像力を喚起するものだと考えています。
下イメージのロゴを見てみてください。

例えば、このロゴに描かれた楕円形のフレームは、四季を通じて巡る日本の豊かな食材サイクルを表現しています。
よく見ると4つのセクションに分かれており、春の新芽、夏の実り、秋の収穫、冬の保存という一年の食の営みが込められています。
このちょっとした「発見」が、見る人の中に能動的な”体験”を生み出します。
「サンポロゴスタジオ」のロゴデザインにおいても、この「着火→体験」の導線を意識的に組み込んでいます。見る人が「あ、これは〇〇を表しているのか」と発見する喜びを感じられるよう、様々な仕掛けを含ませているのです。
シンプルさと仕掛けのバランス
ここで重要なのが「バランス」です。仕掛けを詰め込みすぎると、ロゴは複雑になり機能性を失います。かといって単純すぎると、想像力を喚起する余地がなくなります。
この絶妙なバランスこそが、ロゴ制作の難しいところで、なかなかロゴ制作をAIでは実現できない所以もあり、ロゴの真髄でもあります。
AIは確かに短時間で大量のバリエーションを作り出せます。しかし、「見る人の想像力を適度に刺激する」という微細な調整や、「企業の背景にある物語を視覚的に表現する」といった繊細な作業は、まだ人間のデザイナーならではの領域と言えるでしょう。
サンポロゴスタジオのデザインでは、一見シンプルでありながら、よく見ると「あ、これは!」と気づきを得られる要素を含ませています。それは対話型鑑賞で子どもたちが作品を見て「あっ!」と声を上げる瞬間と同質のものです。

想像力が生み出すブランドへの愛着
このように「見る人の想像力を喚起する」ロゴは、単なる視覚的シンボル以上の価値を持ちます。
自ら発見し、解釈する体験を通じて、人々はそのブランドに特別な愛着を感じるようになります。
美術作品の対話型鑑賞で、参加者が作品に対して親密さを感じるのと同じ現象が起きるのです。
さらに興味深いのは、この効果が社内外に波及することです。顧客だけでなく、企業の従業員もロゴに込められた意味を発見することで、より強い帰属意識や誇りを持つようになります。「私たちのロゴには、こんな素敵な意味が込められているんだ」という共通認識が、チームの結束力を高めるのです。
対話型鑑賞が美術作品と鑑賞者の間に生み出す豊かな関係のように、優れたロゴは企業とその顧客、そして従業員の間に特別な関係性を育みます。それは、スターバックスの緑色が私達に豊かでゆったりとした空間を想像させてくれるように。そんな体験こそが、今日の競争の激しいマーケットで、ブランドが長く愛され続ける秘訣なのかもしれません。
このことは[ロゴデザインで社内の一体感を育てる|インナーブランディング効果] でも詳しく触れていますので、こちらを参照してみてください。
[ロゴデザインで社内の一体感を育てる|インナーブランディング効果]
あなたのサービスやブランドにも「着火」を

「わたしのサービス、ブランド、プロジェクトは、見る人の想像力に火をつけているだろうか?」と自問してみてください。
単に情報を伝えるだけではなく、見る人を能動的な「発見者」に変える力を持っているデザインやロゴかどうかが見えてくるはずです。
サンポロゴスタジオでは、対話型鑑賞から得た知見を活かし、見る人の内側に小さな「着火」を起こすロゴデザインを提供しています。シンプルでありながらも、想像力を喚起する仕掛けを備えたロゴです。
美術館での体験が教えてくれたように、人は「教えられる」よりも「発見する」ことで、より深く記憶し、愛着を持つものです。
ロゴやデザインというのは、いわばそこに至るまでの点火装置です。
あなたのブランドにも、発見の喜びを生み出すロゴを取り入れてみませんか?
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